相続はいつ発生する?

相続に関するご相談をお受けしているとき、何となく話がかみ合わないな、と感じることがあります。

そんなときはまず、相続の基本中の基本、「相続の効力が発生する時点」について確認することにしています。

民法第882条
相続は、死亡によって開始する。

現行民法下では、相続の効力が発生するのは、人が亡くなった時です。

裏を返せば、生きている人の財産を相続することはできないということです。

生きている人の財産をもらったのであれば、それは贈与です。

当たり前のようですが、意外と重要な大前提です。

事例で確認しましょう

父、母、長男、次男、という家族の例で考えてみます。

一戸建ての自宅について、土地は父の単独所有、建物は父と母が2分の1ずつの持分で共有していたとします。

父が亡くなったので、母、長男、次男の3人で遺産分割協議を行い、自宅は長男が相続することになりました。

土地は、長男の単独所有になります。

建物は、父の持分である2分の1だけが相続の対象ですので、母と長男が2分の1ずつの持分で共有するということになります。

つまり、父が亡くなったことで発生した相続で、建物の母の持分まで長男に相続させることはできない、ということです。

将来、母が亡くなったときにも長男は相続人になると予想されるので、母が生きているうちに相続できる気がしてしまうのですが、母の財産については母が亡くならない限り相続は発生しません。

母が生きているうちに建物を長男の単独所有にしたいのであれば、母の持分について、母から長男へ贈与(または売買)をすることになります。

遺言の効力発生時期

似たようなものに、遺言の効力発生時期があります。

民法第985条第1項
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

遺言も、作成した人が亡くなった時にその効力が発生します。

例えば、遺言に「長男にすべての財産を相続させる」と記載されていても、遺言を作成した人が生きている間は、長男が相続することはありません。

「数次相続」と「代襲相続」

誰かが亡くなったときは、速やかに相続手続を済ませておくのが望ましいですが、現実はなかなかそうもいきません。

父が亡くなって遺産分割協議をしないうちに母も亡くなってしまった、父の相続が発生したので相続登記をしようとしたら名義が祖父のままだった、など、相続手続が完了しないうちに、相続人のうちの誰かが亡くなってしまうことは珍しくありません。

これを、「数次相続」といいます。

また、親よりも子が先に亡くなっている場合は、孫(甥・姪)が子(兄弟姉妹)の代わりに相続人になる「代襲相続」となることがあります。

数次相続や代襲相続が起きている場合、相続の発生した時期や順番によって誰が相続人になるかが異なるので、特に注意が必要です。

これを機会に、相続手続を進めてみませんか?

法定相続情報証明制度

以前にこのブログで紹介しました「法定相続情報証明制度」が、平成29年5月29日から始まっています。
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